川のテラスコート

3人の子供と父で暮らしています。子供が学校行っている時はトライアスロンのトレーニングしたり、投資したり、友人と食事したり読書したり。

「読書感想」【かがみの孤城】辻村 深月著 書評

不登校の中学生が、家の鏡が通り抜けられることに気が付き、その先は同じ不登校の中学生が7人集められた城の中であった。

 

約1年間の時間制限の中で、あるものを見つけると願いが一つ叶うという共通目的で、初めて顔を合わせた中学生たちが、少しづつ心を通わせていく。

 

作品的には、昔の宮部みゆきの作風を思わせる。

著者的には「冷たい校舎の時はとまる」で、似たような他の世界を舞台にしているから、まあ違和感はない。

 

全員が自分の人生を見るめ直して、一歩踏み出すという設定は予想の範囲を出ることはないが、ラストの繋がり方はお見事。

 ただこのラストを持ってくるなら、この最後のパートはもっとボリュームを増やして、物語に厚みを持たせてほしかった。

 

 

かがみの孤城

かがみの孤城

 

 

「読書感想」【僕が殺した人と僕を殺した人】東山 彰良著 書評

アメリカで子供を連続して殺していた「サックマン」が逮捕される。

一方舞台は1984年の台湾にて、幼馴染の中にのちの「サックマン」がいた。

 

サックマンの弁護士が、当時の台湾を回想する中での登場人物としてのミスリードはうまく行っているけど、正直テクニックに走り過ぎ。

現在と過去のつなぎ方などはさすがと思わせるが、肝心の物語の肝が弱いためか、各エピソード単体では悪くないのに、せっかくつながっている物語の結末が薄味すぎる。

 

力はある作家だけに残念。

少年たちへの共感も抱けず。

 

僕が殺した人と僕を殺した人

僕が殺した人と僕を殺した人

 

 

 

「読書感想」【危険領域: 所轄魂】笹本 稜平著 書評

所轄の刑事として活躍する父親と、キャリアとして警視庁キャリアとして活躍する息子が活躍する警察シリーズ。

いつもの周辺刑事メンバーの活躍に加え、今回の事件の現場となる福井県警でも組織からははみ出していながら、警察官としての矜持を持ち続ける人達が彩を添える。

 

このシリーズ、最初は青臭くて白ける警察ものとおもっていたけど、段々シリーズが続くにつれて、この登場人物達の通常ありえない正義感が癖になってくる。

そしてまだまだ続くと思われる、このシリーズ続編が楽しみになってきている。

 

組織を逸脱するかなりあり得ない設定ではあるけど、登場人物達の正義感がぶれないという点で、毎回しっかりとした物語の骨格が維持されている。

 

危険領域: 所轄魂 (文芸書)

危険領域: 所轄魂 (文芸書)