「読書感想」【ムーンナイト・ダイバー】 天童 荒太著 - 生への向き合い方
天童荒太の特徴である、人間の生とそれに寄り添う人との間を言葉だけではなく、人間としての行動として表現する人達を描く作品。
震災の地で、立ち入り禁止地区の海の底から遺族の依頼でひっそりと遺品を引き上げるダイバー。
死を受け入れられない遺族の遺品への思い、ダイバーもなぜ自分が生き残ったのかを考え続け、その家族、周囲の人物など決して登場人物が多いわけではないが、誰もがそれぞれの立ち位置を確保して物語の骨幹をなす。
死と向き合うことにより、反面生(性)への思いが強まる主人公。
大きな物語的展開があるわけではないが、じんわりとしみこむ作品である。
ただ天童荒太の作品と考えると、もっと人間の内面に踏み込んだ作品を期待してしまい、消化不良の部分は残る。