「読書感想」【罪の声】 塩田 武士著 書評
グリコ森永事件をベースにしたフィクション。
年末特集で31年の未解決事件を取り上げることになった新聞記者と、ふとしたことから交友がなかった叔父が事件に関わっている疑いを持った男が真実に近づいていく。
これまで明らかになっている事件の事実をベースに、著者の推理を違和感なく散りばめていき、物語に惹き込まれる。
新聞の取材という視点で、当時の事件で明らかになっていなかった部分を丁寧に描いていて、犯人像に光を当てていく。
素直に面白く一気に読ませる。
ただ重厚な物語でありながら、ラストはちょっと平凡な終わり方で尻すぼみ感が得てしまったのは少し残念。
ストーリーの見事さと、事件の加害者、被害者の描写の苦悩の描き方が素晴らしい。
またこれだけの事件での金銭部分については、身代金より株価を利用したという点ではストンと納得できる展開であった。
結局黒幕として誰が一番得をしたのか…