「読書感想」【夜の谷を行く】桐野 夏生著 書評
連合赤軍の一員として、あさま山荘事件時に山中で過ごしていた女性。
服役したのち、今は年金と貯金を崩して、平日のスポーツクラブと姪と妹と会うのを楽しみにつつましく生活している。
そんな中、連合赤軍幹部であった永田洋子の死亡ニュースや、姪の結婚がせまり自分の過去を話すべきかなど悩むなど、過去に向き合うことになって来る。
有名な実話の中に、一人の女性の物語を挿入しているため、リアル感が強い。
そして、相変わらず桐野夏生は女性の内面を描かせると、とても上手い。
著者のもっとも輝くのは、もっと女性のドロドロしたところをこれでもか!と描くところではあるけれど、今回の淡々とした内部描写であってもやはり女性を描く能力の高さは他と違う。
主人公ならではの方法で償いをした反面、まだ内面には必ずしも納得していない彼女の人生の描き方はさすがである。