富士山がよく見える、休みの日にはモールで時間をつぶす人々が暮らす田舎で、介護士として暮らす日奈と海斗。
二人は同棲をしていたが、日奈は東京から仕事で来た既婚者に惹かれ、地元にしばられる海斗は、日奈を忘れられない中同僚の女性と付き合いだす。
それぞれの環境にがんじがらめにされている様や現代の若者の希望の薄さなどが、バックボーンとして物語が進む。
窪美澄らしい作品である。
若者のある種の諦めの感情を掬い取りながら、それでもうっすらとした希望を先に見いだせる物語。
実際、今の若者がとりあえず食うことはできるという程度の生活を目指し、全く夢を見れない社会なのだとしたら、とても悲しい現実ではある。