「読書感想」【テロリストの処方】 久坂部 羊著 書評
医療分野でも勝ち組と負け組にはっきり分かれた将来の日本で、勝ち組医師を狙ったテロが続けて起きる。
現場にはある共通したメッセージが残されており、医学部同級生だった当時の仲間の一人が関係していると関与している形跡がある。
医療崩壊への警告を舞台にした医療ミステリー。
医者でもある著者らしい医療への切り込み方でメッセージ性を持たせながら、物語もしっかりと構成されている。
最後までミステリーとして結末が分からない点は評価できるが、ほぼ医者だけの視点で話が進むのでどうも医療を扱うにしては人間味が足りない。
「読書感想」【春に散る】上下巻 沢木耕太郎著 書評
40年ぶりにアメリカから帰国した元ボクサー。
かってのボクシング仲間を訪ねる中で、恵まれない環境にいる現状を目にしたことから、みんなで共同で暮らすことに。
そこに若いボクサーが現れ、彼に勝手の自分を映し指導をしていく。
著者らしいボクシングを舞台にした青春小説。
正直予定調和から一歩もはみ出すことなく展開し、予想を超える内容は全くない。
ただ安心して読める青春もの。
小説としての面白さを求めると辛いけど、全体的に愛を感じる作品。