「読書感想」【雪煙チェイス】東野圭吾著 書評
殺人容疑をかけられた大学生が、警察の動きに一歩先んじてアリバイ証言をしてくれるはずの、スキー場で会った見知らぬ女性を探しに行く。
まあ、軽い感じでさくさく読める。
でも内容は薄く、ミステリーとしては物足りず。
軽いタッチの東野作品はどうも魅力薄い。
やっぱり、この作者はもっと重いテーマでの作品の方が読み応えあるし、他の誰でも描ける作品とは一味違うと思うので、またそんなストーリを読みたい。
「読書感想」【1934年の地図】堂場 瞬一著 書評
戦前の日米野球で来日したディック。
そのチームの通訳として、特に日本語を話せるディックと進行を深めた地理学者の京極。
2人はその後もゆるい交流を続けていたが、研究者のディックが1年日本に来ることになり、親交が復活。
だが、京極はアメリカの学会でディックの戦前の来日が別な目的があったのではと疑念を抱く。
ストーリー的に期待させて読み進めるが、せっかく面白くなってきた後半がまったく話が広がらず拍子抜け。
堂場瞬一の作品って、こういうことよくあるんだよな。
実際のベーブルースなどの来日は史実に基づいて、どれだけ野球を絡ませるのかと思いきや、史実を離れると平凡すぎる内容だし、題名に関連する地図の話だって、まさかと思うくらい表面的。
途中までは面白かったけど、読み終わってみればエンタメでもサスペンスでもなかった。
「読書感想」【かがみの孤城】辻村 深月著 書評
不登校の中学生が、家の鏡が通り抜けられることに気が付き、その先は同じ不登校の中学生が7人集められた城の中であった。
約1年間の時間制限の中で、あるものを見つけると願いが一つ叶うという共通目的で、初めて顔を合わせた中学生たちが、少しづつ心を通わせていく。
作品的には、昔の宮部みゆきの作風を思わせる。
著者的には「冷たい校舎の時はとまる」で、似たような他の世界を舞台にしているから、まあ違和感はない。
全員が自分の人生を見るめ直して、一歩踏み出すという設定は予想の範囲を出ることはないが、ラストの繋がり方はお見事。
ただこのラストを持ってくるなら、この最後のパートはもっとボリュームを増やして、物語に厚みを持たせてほしかった。