「読書感想」【劇場】又吉直樹著 書評
劇作家として小さな劇団に所属している主人公。
自分の性格も相まって、人生も劇団の仕事も上手くいかず、精神的に死にかけていた時に出会った恋人。
主人公のダメさ加減と、そんな中でも焦る気持ちと流される日常がリアルに描かれている。
もがき苦しみながら生きていきながら、身近な人への心配りが出来ない人物描写が際立っている。
なんか、自分の若いころのあせる気持ちの一部を思い出させるようで、読んでいて苦しくなる部分もある。
ハッピーエンドとして終わらない部分も、現実感だしていて良い。
面白さを感じるかは人それぞれだと思うし、作品としての完成度に不満がある人も当然いると思うが、著者らしい心の叫びが伝わる作品である。
「読書感想」【真夏の雷管】佐々木譲著 書評
道警シリーズ。
いつものメンバーが勢ぞろいで、JRを舞台とした犯罪解決に活躍する。
少年犯罪や、空き巣から、大きな事件へとつながっていく過程は見事だし、署員たちの動きもテンポよく進む。
ただ、この作品シリーズ全般に言えるのだけど、どうも臨場感が薄い。
そのため、物語のスピード展開は早いのに、なぜか読んでいてワクワクしない。
登場人物達はいつもの期待を裏切らない活躍で、今度も読みたいのだけど、なんかもうちょっと物語に入り込めたらいいのだけど。
「読書感想」【猫が見ていた】湊かなえ著, 有栖川有栖著, 柚月裕子著 他 書評
猫をモチーフにしたアンソロジー。
最初の湊かなえさんの話はほぼ実話だと思われ、著者のエッセイを読んでいる人はさらに楽しめる。
特に猫の関わりが大きい作品だけではないし、猫好きとか関係なく楽しめる。
ただ短編なので、読み応えという点では物足りない。