「読書感想」【R帝国】中村文則著 書評
近未来のR帝国が、隣国と戦争を始める。
国を動かす独占的な力を持つ「党」と、それを無条件に信じる国民。
盲目的な国民と、ネットでのみ大きな態度を取る愛国者、難民・民族差別を行う国民、貧困層でありながら自分より悲惨な人達がいるので満足している人々など、現在の独裁国家や、危険な右寄り国家などの現状を思わせる世界を描くのは著者らしい設定。
全体主義への恐怖を、わりと現在の実在の世界に近い内容で描いているので、とっつきやすいが、展開自体は特に目新しさはないので新鮮さはもうひとつ。
それでも、教団Xを面白く読める人なら、この物語も楽しめると思う。
もう少しラストにかけて、希望を入れたほうがすっきりするけど。
「読書感想」【緑の窓口 ~樹木トラブル解決します~】下村 敦史著 書評
役所で新設された樹木に関する部署「緑の窓口」に配属された2人。
専門家の女性樹木医と一緒に、持ち込まれた案件を解決する軽めのミステリー。
今までの下村敦史の作風からすると全く毛色が違い、新しさに挑戦するチャレンジは評価するも、内容、ミステリーとしても平凡すぎる。
しっかり下調べしているのはいつもの通り感じるけど、どれもありきたりな話で、著者の良さが全くでていない。
デビュー作から最初の内は、面白く展開力ある作家だと注目していたけど、だんだん平凡になってきて、期待を裏切り続けている。
ちょっと作品をだすペースが速すぎて、独自の魅力を出す余裕がないのかなと思わせる。